「日本」ってどんな国?/本田由紀

 

 

 今やコメンテーターとして引っ張りだこの社会学者・古市憲寿さんのゼミの指導教官として知られる本田由紀さんが若年層に向けて、統計数値から見える日本の姿について紹介された本です。

 

 以前紹介した『教育は何を評価してきたのか』が学術論文をベースにした内容だったので、やたらと生硬で難解だったこともあって、本田さんの本を再び手に取るのを怯んだんですが、若い人向けということで覚悟を決めて手に取ったところ、かなりわかりやすい内容だったのでホッとしました。

 

 この本では、「家族」「ジェンダー」「友だち」「学校」「経済・仕事」「政治・社会活動」といった分野ごとに日本に纏わる国際的な統計データを元に、日本の姿を読み解くといったモノになっていて、「ジェンダー」だと女性の国会議員や会社役員が少ないとか、性的マイノリティの社会的な受け入れが進んでいないとかといった、まあ、ステレオタイプ的なイメージ通りのモノを紹介されている分野もあります。

 

 「学校」で印象的だったのが、PISAという学力の指数の国際的な指標で日本人は高い数値をたたき出しているのに、それを労働生産性の向上に結び付けれていないのはなぜなのかという、よく言われるギモンがありますが、その答えの一端として本田さんは、日本の教育の在り方について、これも統計的な数字を元に言及されていて、日本の教育というのは演劇型といって、教師が高度な授業を行っているのを生徒がキチンと聞いているので、それを再現するという意味でのPISAのような指標では高い数字を出すモノの、あまり自分でモノを考える訓練が行われていないので、成果を出すための行動に結びつかないんじゃないかとおっしゃられていて、深くナットクさせられます。

 

 また、「経済・仕事」の分野で、昨今の労働生産性の伸びの鈍化の一因として、非正規労働者の拡大などに起因する賃金の低水準での固定化が、経営者に対してIT化などの生産性向上に資する投資のインセンティブを著しく低下させてしまったことがあるということで、これまたナットクなのですが、まさにゆでガエルで、日本の経営者の怠慢が日本の国力を低下させているということのようです。

 

  最も異質で印象的だったのが「友だち」の章で、一瞬この区分があること自体オドロキだったのですが、昨今”絆”ということがよく言われますが、統計の中で友だちの人数を聞かれる項目で「いない」と答えた人の割合が諸外国と比較して突出して高いというのはなかなか異様で、そういう孤立した人が多い状況だから絆、絆というんだろうかと邪推したくなってしまう位です。

 

 そんな風に、国際比較での日本の姿を若い人が把握するというのは、今後国を変えて行こうという意識を醸成という意味でも、かなり意義深い本なんじゃないかと思いました。