格差と分断の社会地図/石井光太

 

 

 副題に「16歳からの<日本のリアル>」とあるように、高校生世代をターゲットにコロナ禍を経た日本の”分断”の現状を紹介した本です。

 

 冒頭で、育児放棄の被害に遭った子供たちが施設に引き取られた際に、おでんを出されて、どうやって食べていいか戸惑ったというエピソードが紹介されていますが、おそらくウチのムスメなんかがそのエピソードを聞いても、なぜ戸惑うのかが理解できないんじゃないかと思います。

 

 要するに、育児放棄されてしまった子どもたちは、出来合いのモノしか食べたことが無いので、手作りの料理を出されてもどうやって食べたらいいのか経験が無いからわからないということなのですが、逆にフツーに育てられた子どもたちはそういう状況が理解できないということで、お互いの境遇が理解しあえないというのは、場合によっては諍いにつながることもあり、分断のタネとなりかねないということを指摘されています。

 

 コロナ禍では、県境を越えてくる人に排他的な対応をしたり、自粛要請に従わないパチンコ屋や居酒屋を非難したりと、それぞれの置かれた立場の違いから、相手に対する非難の応酬があったりということで、格差や分断がより明確になったと言われます。

 

 ただやはりそれぞれにそれぞれの事情があり、そういう止むに止まれぬ状況を理解すれば、そうカンタンに非難できないようなこともあり得るワケで、若いうちから虐げられがちな、移民や障がい者などの境遇を紹介されていて、ステレオタイプのイメージで相手を非難したり虐げたりしないように、理解を促すようにされています。

 

 昨日紹介した『他者の靴を履く』でも再三触れられていましたが、相手の立場を理解した上で対峙することで無用な諍いを避けることができることは、却って自分の利益をも増やすことにつながるということもあり、必ずしもキレイごとだけではなく、若い人たち自身にもメリットがあるんだということも併せて念頭に置いて置いた上で、虐げられやすい人たちの救いになれたら、より日本が豊かな社会を実現できるような気がします。