欽ちゃんの、ボクはボケない大学生。/萩本欽一

 

 

 “欽ちゃん”こと萩本欽一さんは、73歳だった2015年に駒沢大学に入学して大学生となったことが知られていますが、この本は1年生としての1年間を辿った本です。

 

 萩本さんはお父様が事業に失敗したこともあって、早く成功して両親にラクをさせてあげたいと高校卒業後すぐに芸人としての修行のため浅草の劇場に行かれますが、お母さまは萩本さんを大学に行かせられなかったことに悔恨の想いがあったようで、その歳に萩本さんが「大学なんていつでも行けるから」といって慰めたそうなのですが、73歳にして大学に行かれたのは、その“約束”を果たすという意味合いもあったようです。

 

 30歳代の頃にはヒット作を連発した萩本さんですが、どこかネタというか、自分の中で“枯渇”した感覚があったようで、知識だけでなく改めて何かを求めたという側面もあったようです。

 

 そんな中で73歳という年齢で大学に入りながら、あれだけの成功者であるにも関わらず、孫のような年齢の学生たちともミョーなこだわりなく自然に交流されたようで、時には悩める若者に人生の先輩として相談に乗られていたことも明かされています。

 

 駒澤大学の仏教学部ということもあって、仏教学の講義をかなり熱心に受けられていたということで、毎回最前列の真ん中でほぼ欠かさず出席されていたということで、加齢による物覚えの衰えにも関わらず、ノートの取り方の工夫もされて取り組まれていたようです。

 

 個人的には、駒澤大学ということで駅伝のスペシャルサポーターに就任されて学生を励まされたことにそそられて、前年の5区で低体温症になりながらなんとか襷をつないだことで話題になった馬場選手とのエピソードが印象的でした。

 

 リタイアされてから大学に入られる方も増えてきていると思いますが、ここまで積極的に学生の間にも入られたり、講義にも前のめりで取り組まれたりという軽やかな姿勢が印象的で、いつかワタクシもやってみたいなぁ、とかなり羨ましく感じました。