すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった/太田省一

 

 

 ここのところ欽ちゃんの本を立て続けに紹介していましたが、個人的にはお笑いというと、ひょうきん族が一番多感な時期に見ていた番組なので印象も一際なのですが、この本はいわゆるビッグ3と言われるタモリ、たけし、さんまから昨今「お笑い第7世代」といわれるムーブメントまでの変遷を語られた本です。

 

 概ね、ビッグ3~ダウンタウンM-1を経ての第7世代といった流れで語られるのですが、我々がお気楽に見ていたお笑いがここまで芸人の人たちが心血を注いで進化させてきたモノなのかと思うと、かなりの感慨があります。

 

 ひょうきん族なんかも、当時何も考えずに見ている分にはドタバタ劇みたいなモノなのかなぁと思いきや、しゃべくり漫才を中心とした伝統的なお笑いから、ある程度その形式的なモノを壊していくようなところがあったということで、かなり斬新なモノだったということなのですが、思い返してみれば何となくそういう先進性というか、アバンギャルドなモノを思い起こさせられます。

 

 そういうビッグ3から始まった革新的な動きがダウンタウンに受け継がれ、昨今「お笑い第7世代」と言われる世代論から言えば、ダウンタウンを中心としてウッチャンナンチャンなどが「第3世代」という位置付けになるようなのですが、従来のボケ・ツッコミという形式を乗り越えたようなところがあるようで、ダウンタウンの先進的な取組のフォロワーの動きが、昨今のお笑いにも大きな影響を及ぼしているようです。

 

 そのダウンタウンが、お笑いの進化を継承しようということでM-1が始まったということなのですが、そのM-1からさらに新たな動きも出ているようで、かつては関西がリードしていただけあって割とドぎつい笑いがハバを利かせていたということなのですが、YouTuberなどの笑いが多様化を促進したこともあって、かなり「優しい」笑いになっているところがあるようで、この本ではその象徴としてぺこぱを取り上げられています。

 

 最後に2020年のM-1覇者であるマヂカルラブリーの笑いが物議を醸した権を取り上げられているのですが、彼らの笑いが最早コトバを媒介しないというところまで来ていて、そういうなんでもアリな部分も含めて、お笑いの進化がある程度行きついた部分もあることに触れられていて、これからのお笑いの行く末には一抹の不安もあるのかも知れません…