ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2/ブレイディみかこ

 

 

 大きな話題をまいた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の続編が出版されたので、手に取ってみました。

 

 前作ほどレイシズムについての内容が前面に出ているワケではないのですが、階層の国としても知られる英国だけに、それ以外にも貧富の差など網の目のように”格差”の素となる要素が張り巡らされているようで、そういう感覚がこの本の主人公である中学生くらいの子も意識せざるを得ない状況にはあるようです。

 

 日本で中学生くらいの年代だと画一化を要求されて、それはそれでツラい部分は多いとは思うのですが、英国では常に目の前にいるクラスメイトの置かれている状況を意識しないといけないようで、そういう状況については前作の副読本として位置づけられている『他者の靴を履く』でも詳しく触れられていますが、そういう現象が日常の中学生の生活にも浸透していることが、この本でもうかがえます。

 

 日本でも特にコロナ禍以降”格差”について取り沙汰されるようになりましたが、英国では”英国病”と言われた数十年前以降、格差が固定し、最早政府も平準化を放棄しているようにも思える状況を『そろそろ左派は<経済>を語ろう』などの著書でも繰り返し語られていて、労働階級へのそういう施策への怒りがBrexitにつながったということを『労働者階級の反乱』でも語られているのですが、そういう軋轢の影響を中学生くらいの世代のクラスメイト間にも影を落としてしまっていることが不憫に思えます。

 

 それだけに日本の中学生に比べるとかなり社会性に富んでいるというか、老成している印象を受けるのですが、原因が原因だけに手放しでは賞賛できないところがあり、”失われた”数十年がコロナ禍によって延びてしまうことで、日本の子どもたちもこういうことになってしまうんじゃないかという気がして、複雑な想いを抱かされる内容でした。