脳卒中からの帰還/日垣隆

 

 

 以前、日垣さんの脳梗塞の闘病記である『脳梗塞日誌』を紹介しましたが、この本はその後日談で、過酷なリハビリを経て、海外旅行やカジノ、テニスを楽しむに至るまでの回復を果たした様子を紹介されています。

 

 前編でも紹介されていましたが日本の医療の問題点として、患者さんの健康を取り戻すことよりも、”病気を治す”ことにフォーカスしがち、脳梗塞なりガンなりという”病気”は直しても、長い目で患者さんの健康を別の方向性で損なってしまったり、QoLの観点から見ると著しく状況を悪化させることが多々あるようで、そのことについて繰り返し糾弾されています。

 

 また、脳梗塞からある程度自律的な生活をできるようになるには、それなりの期間のリハビリが必要なはずなのですが、入院してリハビリに取組める期間はそのホンの序盤くらいにしかならないようで、後は通院で…とは言いながら、とても通院に耐えうるまでの回復も覚束ないということで、結局は医療費の削減と言いながら、寝たきりを増やすことになっている厚労省の施策の矛盾を再三突かれています。

 

 日垣さん同様、重度の脳梗塞になったかつてのベストセラー作家神足裕司さんのことにも触れられていますが、これらの方々がある程度自律的な生活を送れるまで回復されてことについて、お二方ともある程度以上の経済力があったことも一因なんだとは思いますが、自分の存在意義を取り戻すための執念みたいなモノが必要なんだということを痛感させられますが、そういう特別な人だけでなく、フツーの人たちもそれなりのQoLを保てるような施策ができてこそだと思うのですが、そういうところまで日本の役所は考えてくれないんでしょうねぇ…