酒の渚/さだまさし

 

 

 『関白宣言』や『防人の詩』など多くのヒット曲を持つシンガーソングライターでありながら、文筆家としても小説やエッセイなどジャンルを問わない著作活動をされているさだまさしさんの酒にまつわるエッセイを集めた本です。

 

 世間的なイメージとしてさださんとお酒はそれほど結びつかない人が多いのではないかと思いますが、お酒はかなり嗜まれるようで、日本酒やブランデー、ウィスキーなど多種多様のお酒にまつわるバラエティーに富んだお話を展開されています。

 

 さださんは若くして成功を収められたこともあって、『山椒魚』の井伏鱒二永六輔、指揮者の山本直純などの名だたる著名人との酒を交えた交流も語られているとともに、長く通われたバーにおける交流も語られているのですが、謙虚さを崩さないけれども、物おじせずに名だたる著名人を相手にしながらも懐に飛び込む大胆さもあり、その場を愉しまれている様子が伺えます。

 

 また、秘伝の銘酒の蔵元との交流もあったりと、酒好きとしてのトピックも興味深いモノではあるのですが、やはりさださんのお酒のエピソードは有名無名関わらず人々との豊かな交流の媒介としてのお酒という色合いが濃厚で、下戸の人であっても、お酒の上の交流を羨むのではないかと思うような、芳醇な世界を醸しだされます。