悪の脳科学/中野信子

 

 

 脳科学の中野センセイが、1990年前後に一世を風靡した藤子不二雄Aさん作のシュールなマンガ『笑ゥせぇるすまん』の世界観を脳科学の観点から読み解かれます。

 

 思わず、中野センセイはそんなに前から活動されていたのか!?と思ったのですが、この本の出版は2017年で、中野センセイは中学生の頃に『笑ゥせぇるすまん』を見て強い印象を受けていたようで、その頃から脳科学者としての素養があったということなのでしょうか!?

 

 中野センセイによると『笑ゥせぇるすまん』には脳科学的に興味深い見地がふんだんに盛り込まれているようで、石井裕之さんが『一瞬で相手を落とす!コールドリーディング入門』などの著書で紹介してひと頃話題をまいたコールドリーディングの手法なども盛り込まれているということで、中野センセイ的には、そういう脳科学や精神医学の専門分野に関する知見をちりばめられていることについて、藤子不二雄Aセンセイが専門的な研究をされていたんだろうか!?と本文で疑問を呈されているのですが、巻末の中野センセイと藤子不二雄Aセンセイの対談によると、そういった知見の多くは人間観察によってもたらされたモノであることを告白されていて、藤子不二雄Aセンセイの人間への洞察の深さに中野センセイご自身も驚嘆されたようです。

 

 『笑ゥせぇるすまん』のメインキャラクターである喪黒福造が名刺に「ココロのスキマ…お埋めします」と示されていて、様々な人々の弱みを埋めるために近づいて、多くの人々が破滅的な結末を迎えるのですが、そういう「ココロのスキマ」はほとんどすべての人々が抱えているもので、そういう部分に付け込まれると人間ってホントに弱いんだなぁ…ということを改めて痛感させられるモノでした。