UNIQLOの運営で知られるファーストリテイリングの社長である柳井さんがぬるま湯につかった日本人に向けた怒りのゲキです。
当然日本人にも多くのお客さんを持つ企業の社長としては、大っぴらにすべきではないのではないか、という懸念もあったということなのですが、その当時の日本の体たらくを見ていると、言わずにはおれない心持ちでこの本を書かれたことを告白されています。
この本が出版されたのが2012年なのですが、当時中国を始めとするアジア諸国の経済が活況を呈していた中で、日本経済が過去の成功体験から酔いから覚めず、現実から目を背けて、元寇時の神風を夢見る太平洋戦争当時の日本軍のように、バブルの再来を夢見ている日本人に苛烈なゲキを飛ばされています。
そもそも、明治期にせよ、戦後にせよ、このままでは国家存亡の危機だという危機感を以って、少しでも状況を改善しようと国家を挙げて向上の努力を続けたことで、うまく時流に乗ったこともあって、日本の興隆があったワケですが、昨今の日本は落ちぶれているという自覚も無く、ワケのわからない自国礼賛で目くらましをして、中国や韓国の後塵を拝している現実を視ない人々が指導層にすら多く、成長の努力を怠った国民に資本主義社会の中で生き残っていくことすら覚束ないという危機感をこの本の中で示されています。
それでも結局柳井さんが10年近く前に発したゲキは多くの日本人に響くことなく、日本の状況は何の変化もしないまま、中国や韓国などのアジア諸国は前進を続け、世界の日本における相対的な地位はズルズルと低下して行っているワケですが、それでも政治家などの指導層を含めて、大多数の日本人は過去の成功体験だけを見て、現実を視ずにさらなる地位の低下を招きかねない状況ですが、国家をリードして行く立場にある人たちが、日本人の大半が魅力を感じるような行く末を提示することができない現状では、ひょっとしたら日本人は太平洋戦争の敗戦くらいのショックが無いと目が覚めないのかも知れません…