観光の哀しみ/酒井順子

 

 

 『負け犬の遠吠え』で知られる酒井順子さんが「観光」がはらむもの悲しさを語られた本です。

 

 酒井さんの主要なネタとしては、『負け犬の遠吠え』を代表とする女性の生き方についてのモノと、『女子と鉄道』などの鉄子ネタがあるのですが、この本はそれほど鉄子色は強くないとはいうモノの両者のハイブリッド的なネタとなっています。

 

 冒頭で「観光」がはらむ哀しさについて、招かれてもいないところにノコノコ出掛けて行くところに根差しているということを指摘されていますが、まあ、そういうところにはあまりこだわらずに、かなり下世話なネタも含めて、ビミョーなお年頃の女子を中心に「観光」あるあるが全開です。

 

 特に女子同志で旅行に出かけた時のビミョーな駆け引きというか、マウンティングも含めたやり取りが、ワタクシ自身がそういうモノをうかがい知れないだけに、オバちゃん的な興味をそそられます。

 

 また、カップルで出かけた人々の周囲への配慮のなさを傍から見る視線の容赦ない冷たさが、何とも言えず酒井さん的な「負け犬」感全開なのも笑わせてくれます。

 

 割といろんな世代の観光地での恥ずかしい「あるある」が紹介されているので、他山の石とするのも一興かもしれません。