<自分>を知りたい君たちへ/養老孟司

 

 

 養老先生が2004年から建材に至るまで継続されている毎日新聞の書評の連載を集めた本です。

 

 それにしても、わざわざ副題で「壁」をつけて、大ベストセラー『バカの壁』を連想させたがる編集者のさもしさは何とかならないものでしょうか…

 

 この書評は評者が自由に対象の図書を選んでいいということで、養老先生はご自身のテリトリーにちかい自然科学の本が多く、前半から約6割弱の紙幅をそういった分野の本で占められていて、しかもお好きな昆虫関連の本が多くて、書評の中でも昆虫というのは好き嫌いがはっきり分かれやすいと指摘されている通り、まったくと言って関心のないワタクシは困ってしまいますが、後半はやはり養老先生が熱心に著作のテーマとされている死生観に関する本も取り上げられていて、ちょっとホッとしました。

 

 ただ、個人的には守備範囲外の自然科学についての本も紹介も、養老先生の自然科学へのスタンスが伺い知れて興味深い所は感じられます。

 

 意外だったのが、佐藤優さんの『地球を斬る』を取り上げられているところで、総括で佐藤さんのような著者が多くの日本人に求められているという所に、日本人の知性という観点で救いを感じられているところにミョーにナットクしてしまいました。

 

 でもやはり『死の壁』が印象的だったように、個人的には養老先生は死生観に関するトピックがしっくりくる気がしていて、最終章の「4.人生は一つの作品である<人間>」での紹介が、一番”らしい”なぁ、という気がしています。