奈良で学ぶ寺院建築入門/海野聡

 

 

 建築史の研究家の方が紹介される「古建築」の愉しみ方入門です。

 

 余計なハナシなんですが、建築史って文学部史学科ではなくて工学部建築学科で学ぶモノだったんですね…

 

 「古建築」というのは古代の建築様式で建てられた建築物を指すそうで、実は「古建築」というのは奈良でしか見れないそうで、歴史的な建造物で知られる京都でも鎌倉時代以降の建造物しか見れないということで、「古建築」を見ようと思ったら奈良に来るしかないようですが、著者の海野さんは東京から朝に新幹線に乗ったら、昼前には着きますよ!と軽くおっしゃいます…(笑)

 

 まあ、ワタクシは奈良在住なんで全然いいんですが、古代建築に興味のある人からしたらわざわざ奈良に来てまで見るだけの価値があるということで、唐招提寺薬師寺興福寺東大寺を例に取って「古建築」の愉しみ方を、かなりディープに紹介されています。

 

 入門編といいながら、工法のかなりディープな部分まで語られているので、通訳案内士の受験勉強で建築様式についてはある程度カジッた経験のあるワタクシでも全然ついていけませんが、その工法の進化や歴史的、宗教的な意義についても語られているので、かなり興味深い所です。

 

 特に当時の先進国である中国や韓国との政治的な兼ね合いまで、建築様式に反映されているということで、唐招提寺の金堂は鑑真和上へのリスペクトの意味もあって、紫禁城の様式を模していたり、薬師寺の様式は新羅との融和の意味もあって、様式をとりいれていたりということで、かなり文化的な交流がディープになされていたことを窺わせます。

 

 何にせよ、本だけで読んでても仕方ない部分も多々あるので、近いこともありますし、この本を手にこれらの寺院をディープに愛でたいところですね!(笑)