天皇という「世界の奇跡」を持つ日本/ケント・ギルバート

 

 

 性懲りもなくケントさんの”右翼”本ですが、この本は排外的な色彩は弱そうなので安心して手に取ることができます…(笑)

 

 この本では、バリバリの右翼としての視点よりも、ケントさんの外国人からの視点での天皇制についての言及が興味深い所ですが、あまりにケントさんの天皇陛下への思い入れが強いだけに、どこまでプレーンな観点なのかは心もとないところではあるのですが…

 

 ただ、世界中を見てもここまでの歴史を持つ王家というのは類がなく、2番目に長期に君臨するデンマーク王家にしても西暦900年からだということで、神話上は紀元前660年の神武天皇の即位からだということですが、実在がはっきりしている雄略天皇から数えたとしても1600年以上の歴史をもち、かつドイツから国王を招聘している英国王家などと異なり、血統もかなりはっきりしている「万世一系」ということで世界的にも注目される王家だということで、特に王家や貴族が憲法上存在しえないアメリカでは憧憬の的だということで、そういう意味で、日本人としてはよくわからない部分ではあるのですが、小室夫妻はアメリカでもそれなりに注目され尊重されるのかも知れません。

 

 また、この本では敗戦後の占領政策に移行する中での、連合国側の天皇陛下の取り扱いについての、アメリカ内部でのせめぎ合いについてもかなり詳細に紹介されており、興味深い所となっています。

 

 ヤルタ会談時の天皇の断罪を求めるソ連、中国とのせめぎ合いを、想定される日本の徹底抗戦を見越して押しのけ、さらには国内世論の反発を占領政策やその後の対共産勢力対抗のアジアの砦としての役割を見越してやり過ごすというギリギリのせめぎ合いを紹介されているところには、かなりの感慨を覚えます。

 

 ただ、お互いに天皇制を温存したことはかなりメリットが多かったということは、改めてアメリカに感謝するとともに、世界的にも意義のあることだということを思い起こさせてくれる著作でした。