ルポ貧困大国アメリカ/堤未果

 

 

 先日2018年出版の『日本が売られる』を紹介した堤未果さんの出世作で2008年の出版当初大きな話題をまいたサブプライム恐慌直後のアメリカの貧困層の困窮を紹介したルポルタージュです。

 

 サブプライム自体がなぜ横行したのかが個人的にはかなり大きなギモンだったのですが、焦げ付こうがどうしようがとにかく貸してしまいさえすればそれなりに利益を得ることができる”貧困ビジネス”だったようで、借りてしまった貧困層は家を失った上に家の資産価値が低下していたため多大な借金を背負ってクルマで生活するような人が多数発生したようです。

 

 また、サブプライムの被害者だけでなくても、健康保険制度の未整備から医療費負担が日本と比較してかなり過重となっており、一旦大きな病気をして医療費負担が発生してしまうと、それまで安定した生活を送っていても、即刻貧困層に転落してしまうリスクを孕んでいたようで、当時のブッシュ政権の後を受けたオバマ政権で”オバマケア”として皆保険制度が整備されたのですが、トランプ政権が反故にしてしまい、その後サブプライムの頃より景気は持ち直しているものの、貧困層にとっては医療費は大きな頭痛のタネであり続けているようです。

 

 また、生活を賄うだけの満足な収入を得ることができるような職を得ることができない不法移民に市民権の付与などをちらつかせて軍にリクルートをするエージェントが跋扈したりして、乗っかったが最後、軍務での負傷やPTSDなんかで廃人にされた挙句捨てられてしまうという、国家ぐるみ!?でエゲツないことをしていたらしいことが紹介されていて心底驚いた次第です。

 

 まあ、日本ではまだここまであからさまなことは無さそうですが、アメリカで起こったことは日本でも起こることが多いですし、経済が低迷し続けている中、この本で紹介されているような恐ろしい事象が日本で起こってもフシギではない気がします…