18歳からの民主主義/岩波新書編集部

 

 

 2015年から投票権を持つ年齢が18歳に引き下げられることを受けて、おそらく18歳の人をターゲットに投票への意識を促すことを目的として2016年に出版された本です。

 

 この本では、投票を取り巻く政治、経済等々の制度面や投票をする際の観点、また同世代もしくは18歳だった人たちのその頃の意識の振り返りなども盛り込まれているのですが、イマイチどういう人をターゲットに描いてこの本を企画したのかがよく伝わってきません。

 

 というのも制度面などテクニカルな面についての執筆者のほとんどが大学のセンセイだったりするワケで、それに対して投票ってどうしたらいいんだろう…という18歳周辺の世代の声や、オトナの投票権を得た時期の回顧も盛り込まれているのですが、それをつなぐ部分が希薄で、おそらく投票行動をどういう風に考えたらいいのかを逡巡している人たちって、新たに投票権を得た人に限らず、そういう部分を知りたいんじゃないかと思えるのですが、そういった「答え」はありません。

 

 ただ、香港の民主化運動で名を馳せた周庭さんの声も寄せられていて、フツーに「民主主義」を享受していることと、それを勝ち取らなければならない人たちから見た「民主主義」を対比することで考える機会を持つのは意義があるのかも知れません。

 

 あと、この本で印象的だったのが、あまり編集者がこの本を作る上でのコンセプトを浸透させる努力をした形跡の見られない割に、民主主義における多数決の弊害について語る人が多かったことで、選挙のコンセプトと真逆にはなってしまうのですが、民主主義という制度を考える上では、かなりいいキッカケになると思われました。

 

 まあ、岩波新書のこういう本を手に取ろうとする18歳はマジメな人が多いと思われるので、そういう人の考えるキッカケとなって、同世代の政治に無関心な層への触媒になればいいですね…