歴史のダイヤグラム/原武史

 

 

 オフィシャルな肩書は日本政治思想史を専門とする学者でありながら、鉄道に関する著作も多く出版されている方が書かれた『鉄道に見る日本現代史』ということです。

 

 そういうサブタイトルに謳われるほど大げさで体系的なものではなく、日本において鉄道が全国的なインフラとして定着した大正時代以降の日本の世相と鉄道との絡みについて語られた朝日新聞土曜別刷り『be』連載の同タイトルのエッセイをまとめたモノです。

 

 全体を読んでいて感じたのが鉄道の社会的地位の低下で、コロナ禍を経てよりその傾向が顕著になったと感じてはいたのですが、確かに未だに鉄道が多くの人々の生活に欠くべからざる主要な社会インフラであることは間違いないモノの、確実のその重要性が低下しているのは、この本の大正から昭和初期のトピックを読んでいると否が応でも感じてしまいます。

 

 主要幹線を走る鉄道に乗る名だたる著名人について取り上げられていて、とりわけ冒頭に一章を設けて皇室と鉄道のつながりについて語られているのですが、天皇陛下を始めとして皇室の方々が出かけられるときに鉄道を利用される機会が多く、原宿駅高尾駅に専用ホームが設けられていたのも、最早使用されなくなって久しくなっています。

 

 ワタクシがお世話になった大学病院の最寄り駅である畝傍駅は日本神話の中で初代天皇とされる神武天皇陵の最寄り駅で、皇室の方々が列車の搭乗を待たれるために利用される貴賓室があるのですが、こちらも利用されなくなって久しく、畝傍駅のある橿原市JR西日本が管理の押し付け合いをするような体たらくです。

 

 テツとしては寂しい限りではありますが、これも時の流れの無常さのなせる技かもしれなく、この本で華やかなりし頃を懐かしむしかないんですかねぇ…