日韓関係史/木宮正史

 

 

 

 韓国現代史の研究者の方が戦後の日韓関係を振り返りつつ、日韓関係改善の糸口について語られた本です。

 

 この本が出版されたのは2021年7月ということで、未だ安倍政権と文在寅政権が悪化させた日韓関係が放置されたままとなっており、次期大統領選の結果も見えない史上最悪の状況だった頃で、歴史的な経緯を踏まえて、そういう状況になった原因を紐解かれます。

 

 韓国側の”日帝支配”や秀吉の侵攻などといった積もり積もった恨みつらみという要素は底流に流れ続けているのは間違いなく、基本的には日本憎しというのがベースではあるのですが、1965年の日韓基本条約締結前後も復興に向けて日本の協力を引き出そうという意図もあり、当時日本との関係が深かった朴正煕が大統領だったこともあり、ある程度日本に気をつかったという側面があり、今なお日韓基本条約の内容自体に不満があるということで、不満を抱えたままガマンをして日本に遠慮をしているという側面が否めなかったということです。

 

 日本のバブル崩壊以降の失われた○十年以降、どちらかというと韓国の方が経済的にも活況で、エンタメ業界を始めとして国際的な影響力を強める中で、最早日本の協力を仰ぐ必要性が低下し、遠慮する必要がなくなったことから、遠慮がちな日韓関係への不満が爆発した挙句、日韓基本条約の内容についても蒸し返したくなるという構造となり、よりフェアな関係を求めてという側面があるようです。

 

 さらには日本側の遵法意識が法文に忠実にあるべきだと考えるのに対し、韓国側が時期に応じてよりメリットのあるような法文解釈をすべきだという遵法意識の差異が軋轢を生みだしているという側面を指摘されています。

 

 そんな状況の中で日韓双方が軋轢の原因を相手に求めて非難の応酬となっているのが文在寅政権の末期であり、尹錫悦大統領が就任して対米関係の改善のためか、カタチとしては対日関係の改善の姿勢を見せている現状、お互いオトナになって譲れるところと譲れないところの会話を始めるくらいのことはしないと、中国の圧力が増す中、お互いマズい状況になってしまいかねませんよね…