自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実/布施祐仁

 

 

 自衛隊が国連のPKO活動に派遣されるようになってから30年が経過するということで、自衛隊の海外派遣の動静を追い続けてきたジャーナリストの方が自衛隊海外派遣の実態に迫った本です。

 

 そもそも自衛隊憲法の規定の制限の問題で専守防衛のための「必要最小限度の実力」として整備が進められたこともあって、海外への派遣は想定されていなかったのですが、1991年に勃発した湾岸戦争時に130億ドルもの資金供与をしながら、クウェート政府が戦後に発表した感謝の新聞広告の中に日本が含まれていなかったことがトラウマになり、紛争時の積極的な海外への協力の必要性が語られ、同時期に国連の平和維持活動(Peace Keeping Operation:PKO)が本格化したことから、1992年のカンボジアへの派遣を皮切りに停戦合意がなされた地域へ自衛隊が派遣されるようになったということです。

 

 ただ、憲法上の制約から現地での自衛隊の活動から様々な制限で雁字搦めとなっていたということで、武器の使用については相手から攻撃を受けた際の最低限の抵抗に限られたということで、派遣当初からかなりの危険が懸念されていたようです。

 

 基本的には交戦の停止が成立しており、当事国のPKO受け入れが前提にはなっているものの、実際には戦闘が発生している状況も多く、自衛隊も巻き込まれかねない状況ではあったのですが、あくまでも憲法の規定に則った参画を強調したい政府は「散歩発的な発砲」があったに過ぎないと説明し続けてきたということです。

 

 そういう矛盾が一気に噴き出したのが2017年の南スーダンへの派遣において、実際には戦闘が発生していて、現場の日報ではハッキリと「戦闘」の存在を明記していたにも関わらず、その日報の存在自体を無かったことにしてしまい、当時の稲田防衛大臣引責辞任につながった事件と言えます。

 

 この本では実際にPKOk圧胴に従事した自衛官への取材などを経て、それまでの活動でも「戦闘」に巻き込まれた経験を明らかにされていて、政府は原則をタテに現実を隠蔽し続けていたことを告発されているのですが、こういった活動をするからにはキチンと現実を踏まえた法整備をした上でないと、いつか従事する自衛官に犠牲がでてしまうリスクが大幅に上がってしまうということもあり、それができないのであれば現場に責任をなすりつけるような「国際貢献」なら恥を忍んで止めるしかないんじゃないかと思うのですが…