空気を読む人 読まない人/老松克博

 

 

 この本も「同調圧力」に関する本なのかな!?と思いきや、パーソナリティ障害などの精神疾患の臨床医の方が、臨床心理学・精神医学の観点からパーソナリティについて語られた本です。

 

 人間の人格の類型というのが、大きく分けて「空気を読む」タイプの「人格系」と「空気を読まない」タイプの「発達系」の二つに分かれて、忖度が重視される日本では大半が「人格系」にカテゴライズされるということで、とかく「空気を読まない」とされる「発達系」にとって生きにくい状況となることが多いといいますが、逆に「人格系」も人によっては「空気を読み」すぎて自分を見失ってしまい、アイデンティティ・クライシスによって精神疾患となってしまう状況となるようです。

 

 「人格系」「発達系」というのはあくまでも表面上顕著にみられる傾向からカテゴライズされるだけで、白黒ハッキリとした区分なワケではなく、誰しもどちらの要素も持っていて、ただ単にどちらの特徴が顕著に出やすいかということみたいです。

 

 ただ「人格系」「発達系」の特徴そのものはかなり相反する要素があり、双方の特徴の極端な出方がする人同士が相対すると、軋轢を生むことが多いということで、特に日本社会では、感覚的で周囲の状況への配慮に欠けるように見えてしまう「発達系」に対して反発的な反応が出ることが多く、「発達系」にとっての生きにくさにつながりやすいようです。

 

 「人格系」「発達系」双方が、それぞれのパーソナリティに基づく悩みを抱えていることを指摘されていますが、そういう場合に得てして起こっているのが、自分と異なるパーソナリティを持つ人に対する敬意が欠如している場合に多く、相手の特徴に理解を示すことによって、多くの軋轢は解消とまでは行かなくても、緩和されることが多いということです。

 

 そういう異なる特徴を持つ相手を理解するための方法論として、”自己との対話”を進められているのですが、例えば「人格系」が顕著な人であっても、「発達系」の特徴をもつ「もうひとりの自分」がいて、”自己との対話”をススメられているのですが、”自己との対話”を深めることによって、相反するパーソナリティへの理解も深めていくことができるとおっしゃいます。

 

 そういう”自己との対話”の臨床的な方法論であるアクティブ・イマジネーションの具体的なノウハウなども紹介されていて、この本ですべてが解決できるワケではないとおっしゃりながら、悶々とした状況を打開するヒントが多く紹介されていて、人間関係に悩むあらゆる人にとっての何らかのブレイクスルーになる本なんじゃないかと思います。