日本アニメ史/津堅信之

 

 

 20世紀初頭の黎明期から世界に冠たるアニメ大国になるまでの日本におけるアニメの歴史を追った本です。

 

 元々、アニメというとディズニーが1940年代から長編アニメーションのパイオニアとして長らくアニメ界をリードしていたのですが、日本でも割と戦後間もない頃から東洋のディズニーを目指すということで取り組まれていたようです。

 

 特に黎明期には手塚治虫さん率いる虫プロダクションが、世界初だという30分のアニメ番組の週一の放送という形態を取り入れ、その後もテレビにおけるアニメ放映のスタンダード的なフォーマットを取り入れ、さらにはアメニティ販売や主題歌の商品化といったアニメの商業化に向けた様々な取組に早くから取り組まれていたことに驚きます。

 

 また、ディズニーを始めとする諸外国のアニメーションが、オトナの鑑賞に堪えうるモノを作っていたとはいえ、基本的には子どもをメインターゲットとしているのに対し、手塚治虫さんの『鉄腕アトム』でも環境破壊などのテーマを取り入れるなど、当初からオトナをターゲットとして視野に入れていたモノが少なからずあったようで、『あしたのジョー』や『巨人の星』など当時流行していた劇画を原作とした初期のアニメーションでも、オトナのファン層を当時から意識していたことが伺えます。

 

 その後、次第にそういった傾向に拍車がかかり、高畑勲宮崎駿のスタジオ・ジブリだったり、スタジオ・ジブリ出身の細田守だったり、『君の名は。』の新海誠に至るまで、作家性が大きくクローズアップされるようになり、芸術性が世界的にも評価されるに至ったようです。

 

 この本を読んでいると、高畑勲宮崎駿など黎明期から”職人”としてアニメ制作に携わられてきた方々が当初から高い志を以って政策に取組まれてきたことが、昨今の日本アニメの興隆につながっているんだな、ということがよくわかり、今後もそういう質の高い作品が生み出され続けたらいいですね!?