「右翼」の戦後史/安田浩一

 

 

 以前、”知の怪人”佐藤優さんと池上彰さんによる『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』という戦後の左翼についての歴史を辿った本を紹介したのですが、こういう本を見つけたので反対側を見て見るのもいいか、と思って軽いキモチでこの本を手に取ってみたのですが…

 

 昨今、日本の国力の低下が無視できないレベルになってきたこともあって、ネトウヨと呼ばれるネット上でヘイトスピーチ等の排外的な論調を展開する向きも目立ってきているようで、個人的には伝統的な日本の文化の尊重や、天皇制を支持するという意味での”右翼”を自認するワタクシとしても、その自称を多少恥ずかしく思う事象が多々あるのですが、この本を読むとそれどころじゃない思いがするどころか、すぐさまそのカンバンを取り下げたるなってしまうような、空恐ろしい内容でした。

 

 太平洋戦争の敗戦を受けて、政権への影響が強かったいわゆる「右翼」はGHQによって根絶に等しいほどの弾圧を受けるワケですが、やはり天皇制への支持というのは日本人の骨髄にしみこんだ考え方だということもあって、次第に勢力を回復して行くようすが紹介されています。

 

 ただ、その戦後に復活した「右翼」というのが、戦前にテロを多発させた「昭和維新」の信奉者の亡霊がよみがえったかのような、天皇親政の復活ということ以外は、排外主義的なヘイトスピーチだったり、反左翼だったり、敵対勢力を暴力で抑圧しようとする暴力主義だったりと、おおよそ国家観とは縁遠いモノで、単なる悪い意味での愛国心の暴発としか言いようのない勢力で、正直、こういう思想の持ち主が国家にそれなりの影響力を及ぼす人々の中でもかなりの勢力を占めているところに恐ろしい想いがします。

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが安倍首相の反知性主義を手厳しく批判されていましたが、そういう人たちって、こういう風に暴発してしまうんじゃないかという危うさを思うと、そういう批判も仕方がないのかな、という気がしますし、こういう思想の危うさを改めて痛感した次第でした。