感動する、を考える/相良敦子

 

 

 NHKの朝ドラ『ウェルかめ』などの脚本を手掛けられた方が、「感動する」というのがどういうことなのかを紐解いた内容の本です。

 

 脚本家の方だということで、そうすれば視聴者が「感動する」のかということについては、ある意味専門家ということになるんでしょうけど、必ずしも狙っていたところがスベったり、思わぬところで感動を読んだりということで、必ずしも100%の成功法則は無さそうで、というのも「感動」というのが人それぞれツボが違うということもありそうです。

 

 とは言いながら多くの人の感動を呼ぶということもあって、ある程度共通項的なモノがあるのではないかということで、心理学者の方の研究を引き合いに出して、突き詰めると、

  「驚き」

  「達成」

  「充足」

  「回帰」

と言ったところに収斂されるようです。

 

 この本では相良さんは上記の4つに加えて「共感」という要素も加えて語られていて、実際にご自身が作品を作り上げていく上でのご経験や、過去の名作と言われる映画などの事例を引き合いに出して「感動」のメカニズムに迫ります。

 

 さらには、「知っている」ことが感動に及ぼす影響についても言及されていて、例えばスポーツなんかで、ある成果を挙げたということに感動を覚えるということはアリなのですが、さらにそれまでの過程でピンチを乗り越えたということを「知って」いたら、より感動が大きくなるということに覚えがある方も少なからずいらっしゃると思うのですが、逆に「知り過ぎて」いると興を削がれるという側面もあり、なかなか難しいところです。

 

 ということで「感動」ということを紐解いてみることがこんなに複雑な要素があって興味深いモノがあるというのはちょっと意外で、かなり興味をそそるモノでした。