「日本国紀」の天皇論/百田尚樹、有本香

 

 

 右寄りの論客として知られる百田尚樹さんに『日本国紀』という独自の史観に基づく通史の歴史書があるそうなのですが、その本の趣旨に沿って、『日本国紀』の編集も手掛けられた有本香さんと天皇について語られた本です。

 

 小室真子さんの結婚を期に女性天皇女系天皇を認めるべきなのではないかという議論が出てきていますが、まずはこの本でそういう議論の中で特に「女系天皇」についてあまり世間では理解されていないのではないかということで、サザエさんの家族を例に取ってかなりわかりやすく説明されています。

 

 波平さんが天皇だとすると、サザエさんやカツオ、ワカメが天皇になる分には「男系天皇」ということなのですが、タラちゃんが天皇になろうとすると「女系天皇」ということになるということです。

 

 じゃあ、女系天皇の何がマズいのか!?というと、天皇家の血統について「万世一系」と言われますが、女系天皇の即位でそれが途絶えてしまうということで、世界でも経緯を集める最古の王家としての権威に傷がつくということで、遺伝形のハナシも交えて説明されていて、天皇家固有のY遺伝子が継承されなくなるということなんだそうです。

 

 前半は「万世一系」を中心に語られているのですが、後半は昭和天皇の事蹟について語られていて、天皇の神格化を問題視したGHQによってその権威を薄めるような「洗脳」によって昭和天皇の功績についてありのままに伝わっていないところがあるということで、その功績を有体に理解してもらえるよう特にアツく語られています。

 

 まずは最大の功績として、ポツダム宣言受諾の決断を挙げられていて、ご自身の処刑や天皇家の断絶も覚悟の上で、日本全体が焦土になることを阻止されたということで、当初昭和天皇の処刑を検討されていて、マッカーサー昭和天皇と会見した際、ドイツのウィルヘルム二世同様命乞いに来るのかと思っていて冷たい態度で迎えたとのことですが、昭和天皇が自分の身はどうなってもいいから国家の復興への支援を求めたということで、マッカーサーも感銘を受けて帰りは見送りに出たということです。

 

 また、終戦直後昭和天皇が慰問のために全国を回りたいとGHQに申し出た際に、轟々たる非難を浴びると思って許可したところ、圧倒的に歓迎されたのを見て慌てて中断させ、その状況を見て日本の再生には天皇を利用した方がいいと考え、ソ連、中国の反対を押し切って処刑を回避したということです。

 

 ただ、それでも天皇を神聖視することへの危惧は続いていたようで、いわゆる「人間宣言」につながるワケですが、その内容をよく見て見るとそういう趣旨は希薄だということで、天皇の神聖視による再軍国化を危惧したGHQのプロパガンダという側面の強いモノだったということです。

 

 いずれにせよ、天皇制というのはキリスト教イスラム教と同様、東日本大震災の際にも認識を新たにしたように、日本国民にとって心の拠り所であり、「千代に八千代に」続いて行って欲しいモノです。