漂流 日本左翼史/池上彰、佐藤優

 

 

 『真説日本左翼史』『激動日本左翼史』に続く日本の左翼の戦後史を追ったシリーズ第三弾にして最終作で、本作では1972~現在までをカバーしております。

 

 前作の最後であさま山荘事件よど号事件といった事件の暴力性により次第に左翼の過激さが世間から敬遠されつつあることに触れられていましたが、この本ではそれ以降今日に至るまでの日本左翼の退潮を追っているだけあって、前2作と比べてボリュームも170ページ余りと圧倒的に少なく、お二方の語り口にもどこかチカラの無さを感じさせます。

 

 次第に活動の主導が過激派や学生運動から労働組合運動に移行して行って、その後高度経済成長期に入って、組合運動自体も次第に熱を失っていき、国鉄の解体、ベルリンの壁の崩壊~ソ連の崩壊ということもあって、すっかり左翼が存在感を失っていくことになります。

 

 1970年代に一時期地方行政において左翼勢力が活気を帯びた時期があったモノの、次第に共産党社会党も理念を失い、かろうじて共産党がある程度政党としての体を保っているに過ぎない状態にまでなっています。

 

 昨今、資本主義経済の限界が叫ばれ、マルクスの考えが再び脚光を浴びつつある中で、共産党などは再びその理念に基づく政策を提示するチャンスもありそうなモノですが、そういった立て直しをしようという意図もあまり見られないのが残念ではありますが、最早時代と共に風化して行くだけとなってしまうのでしょうか…