復活への底力/出口治明

 

 

 最近あまりご活躍の様子が伝わってこないなぁ、と思っていたら出口さん、2021年1月に脳卒中で右半身不随となっていたということで、この本はそれからわずか1年余りでリハビリを経て学長として復帰されるまでの過程を紹介した本です。

 

 以前、作家の日垣隆さんが脳梗塞からの復活を辿る『脳梗塞日誌』を紹介して、復帰までの執念の凄まじさをヒシヒシと感じましたが、出口さんは74歳にしての罹患ということで、病院のスタッフもそのまま引退だと思われていたということですが、ご自身がAPUで手掛けられている改革に道筋をつけるまでということで、学長への復職を志しての執念のリハビリの過程を描かれます。

 

 しかも単身赴任をされていたということで、身の回りのことを一通りこなせるまでに機能を回復しなくてはいけないワケですが、右半身不随の状態から淡々と療法士の先生方のメニューを率先してこなしていかれる様子を紹介されます。

 

 また学長としてスピーチの機会も少なからずあることから、言語療法も並行して進められていたということで、かなりヘビーなリハビリだったことが伺えますが、療法士の先生方が寄せられている証言によると常に前向きに弱音を吐くことなく取り組まれていたということで、その意志の強さが非常に印象的です。

 

 この本の出口さんの取組せよ、日垣さんの取組せよ、病から復活して自己の存在証明をしようとする執念の凄まじさを感じますが、そういった素養があるからこそ日本を代表する知性となり得たんだろうということに勝手にナットクしてしまった次第でした。