官僚たちのアベノミクス/軽部謙介

 

 

 野田民主党政権の崩壊から安倍元首相の再登板の時期の裏側で、アベノミクスをまとめた官僚たちの暗躍を追った本です。

 

 元々民主党は、自民党政治における官僚支配の弊害を打破するということで政治主導を標榜したことが支持されて政権に就いたという側面もあって、従来と自民党政権と比べて官僚と敵対する部分が多かったのですが、それ故に政策の細かい所のツメが甘く、特に経済政策と外交で迷走を続け、東日本大震災という不運はあったモノの、国民が民主党政権への嫌悪感が蔓延していた中での安倍首相再登板という意味で、それだけで期待をされてしまうような状況にあったワケですが、この本自体「安倍の犬」が書いた本なのか、結果として何のメリットももたらさなかったアベノミクスをやたらカッコよく書いているところに多少イラッとします。

 

 特に従来官界の中でも王者として君臨していた財務省と安倍元首相の折り合いが良くなかったこともアリ、アベノミクスの取りまとめを経産官僚中心にまとめさせたこともあり、それまで民主党政権で押さえつけられていた中、久々に存分に腕を振るう機会を与えられて、俄然張り切っていて、その後、畑違いのコロナ対策にクビをツッ込んでアベノマスク等の迷走を見せるとは思えないほど、際立ったところを見せます。

 

 ただその中で金融政策を牛耳る日銀のトップで、あまり金融政策の政策効果を疑問視する任期終了間近だった当時の白川総裁を押さえつけて、その後の黒田総裁の「異次元の金融緩和」につながるインフレターゲットを設定した金融政策を取り入れるワケですが、流動性の罠を見抜けなかったという意味でやはり金融政策のシロウトである経産官僚のシナリオにはムリがあったようですが、金融引き締めのタイミングを失ってしまい、今なおその政策から脱することができずに、不況下のインフレであるスタグフレーションが発生している中でも金融の引き締めができない状況にある責任は誰が取るんだろう…と思いますが、ここは日本的に誰も責任は取らないんでしょうね…という結果になるので、やたらカッコよく書こうとしているところに、少々じゃなくて多いにイラッとしているというのが正直なところでしょうか…