モヤモヤそうだんクリニック/池谷裕二、ヨシタケシンスケ

 

 

 昨日に引き続き脳科学者による子ども向けの悩み相談的な内容の本ですが、昨日の中野センセイのモノに比べて、今日の池谷センセイのモノはセンセイのキャラを反映してか、かなりコミカルで軽めのタッチになっています。

 

 この本は、東京学芸大学付属竹早小学校の3~6年生から池谷センセイに宛てた質問に回答するカタチとなっており、かなり賢い学校ではあるモノの、ターゲットは昨日の本よりも多少幼いところを狙っているような気がします。

 

 「脳科学者」への質問ということで、どうしたら記憶が良くなるか、とか集中力が続くようになるか、といったかなり実利的なモノが多くなっており、昨日の中野センセイのモノ程「悩み相談」の色彩は弱めで、ここでの「モヤモヤ」はギモンを抱いたことによるモノだと考えた方がいいかも知れません。

 

 とはいえ内容的にレベルが低いのかというと、有名進学校で集めた質問だけあって、中にはかなり高度な質問もアリ、かなり興味をソソる内容となっています。

 

 特に学習のコツについての質問などでは、如何にして効率や集中を上げようというモノがあるのですが、脳科学的にかなり興味深いモノがあるようで、公式が成り立ってきた意義を脳科学的に語ったり、脳科学的に学習の効果が上がりやすいような方法論を語られていたりと、子どもだけじゃなくオトナにも参考になるようなモノが目白押しです。

 

 オモシロいのが集中力に関するところで、そもそも人間というか動物と言った方がいいのかも知れないのですが、進化論的にあまり1つのことに集中し過ぎないように、脳がストップをかけるようになっており(そうじゃないと、天敵が近づいて来た時に気付いて逃げることができなくなってしまうからなんだそうですが…)、そういう性癖をアタマに入れた上で、コマ切れでの集中を志向することが最上の策だということです。

 

 それにしてもご自身の子育てに関連して執筆された『パパは脳研究者』や、アメリカで日本人の高校生向けに行った講義をまとめた『進化しすぎた脳』など若い人をターゲットとした著作に興味深いモノが多く、子どもが好きなのか、研究対象として若い人が興味深いのかはわかりませんが、かなり若い人への関心が高いようで、こういう啓蒙的な著作を今後も期待したいところです。