世界は分けてもわからない/福岡伸一

 

 

 『生物と無生物のあいだ』の福岡さんが2008年6月~2009年7月に『本』誌に寄稿した連載をまとめた本です。

 

 福岡さんというと『生物と無生物のあいだ』でも、かなり難解で専門的な科学的なことを語られていても、あまりのストーリー・テリングの巧みさと美文で、内容はよくわからないんだけど、ぐいぐい読まされるということで、気をつけないと読み進んだのはいいけど、結局何もアタマの中に残らなかったということになってしまいかねません。

 

 この本でも科学的なことを芸術や旅と絡めて語られていて、見事な構成で読ませるのですが、割とこの本は依頼する側の意図なのか、食物の腐敗やガン細胞の生態など我々に身近なテーマを取り上げているので、ある程度内容も理解しながら福岡さんの美文を堪能できます。

 

 そんな中で割と科学的な思考法というか、問題に対処するにあたっての考え方みたいなものを折に触れて語られているのが個人的にツボで、非常に参考になります。

 

 類似しているモノの対比によって相違点や特徴を見極めるとか、一連の現象の一部を切り離して考えることで影響について考えるとか、日頃から科学的思考に馴染んでいる人だったら当たり前なのかも知れませんが、ワタクシのようないわゆる文系脳にとっては、多少目からウロコ的なところもあり、そういう思考法をするからそういう結論が導き出せるのか!?という考え方を垣間見れたのが個人的には嬉しい所でした。