地図の無い国から/ロバート・ハリス

 

 

 よく何かの本で推薦図書や参考図書として挙げられるモノって、結構芋づる式に自分の関心のある分野の知らない本を紹介してくれて、こういうブログをやっていると重宝しているのですが、時折備忘録に書名だけを残しておいて、何の本で推奨していたのかを失念してしまうことがあって、意味ないやん!?ということになってしまうのですが、この本もそういう一冊だったりします…

 

 この本は一見翻訳本かと思われますが、作者は『百万人の英語』で講師をされていたJ・B・ハリスのご子息でお母さまが日本人のクウォーターだということで、日本語で書かれたようです。

 

 この本は短編小説集みたいな感じで本来ならこのブログの守備範囲外なのですが、ハリスさんの自伝的な小説で、ヒッピー・ムーブメントやビート・ジェネレーションの匂いを感じさせたこともあって、取り上げてみました。

 

 ヒッピー・ムーブメントと言えば、自然回帰だったり、性的な解放であったりと、自由で刹那的なところがあり、楽しくやろうぜ!といったストレオタイプのイメージがありますが、ヒッピームーブメントに思想的な影響を与えたケルアックやキングバーグなどのビート・ジェネレーションの文学者は禅宗などの東洋的な思想に影響を受けた深遠な精神世界を追求したモノが多く、実は自由への志向は精神的な懊悩の裏返しと言えるのかも知れません。

 

 この本でもトラウマとまでは言わないまでも、親子間の軋轢や友人とのちょっとしたトラブルなど、知らぬ間に刺さった精神的なトゲみたいなものが、酒、ドラッグ、オンナ、旅などに駆り立てる場面を描写していて、ビート・ジェネレーションやヒッピー・ムーブメントの残滓を感じさせます。

 

 そういう懊悩というのはどの世代であってもあり得ることで、こういう刹那的な考え方というのは、現代の若い世代にも共感できるところがあるのかも知れません。