一汁一菜でよいという提案/土井善晴

 

 

 今年の3月末に、1974年にお父様で料理研究家土井勝さんが始められて、お父さまの逝去に当たって引き継いだテレビ朝日の料理番組『おかずのクッキング』が終了したことが悔やまれる料理研究家の土井喜晴さんが常々提唱されている「一汁一菜」のススメをまとめられた本です。

 

 『おかずのクッキング』放送の最終月でも「一汁一菜からはじめよう」をテーマとされていましたが、元々日本はそれほど豊かではなかったこともあって、ご飯と味噌汁と漬物くらいで一食を済ませることが多かったということで、漬物をサカナとかちょっとした一品に置き換えることもあったとは思うのですが、漬物を一品と数えるくらいで、ある程度具だくさんの味噌汁があれば、それなりに食べ応えがあり、栄養摂取という意味でもかなり理に適った食事だったということもあるようです。

 

 さらに昨今は共働き世帯が多く、なかなか手作りの料理を準備するのもムズカしい状況もあるようですが、一品は冷凍食品や買って来たお惣菜でもいいから、何とかうまく手も抜きながら味噌汁だけは作ってみることから始めませんか!?という要素もあるようです。

 

 「和食」がユネスコ無形文化遺産に指定されたように、日本食は深遠な世界観を持つワケですが、そのベースを成すのが「一汁一菜」であり、季節の野菜などを少しずつ盛り込むことで、そういった美意識の一端を垣間見ることにもつながり、最低限「一汁一菜」をベースにした食事というモノを実践することが日本人の伝統的な価値観を受け継いでいくことにもなるようです。

 

 ワタクシも在宅勤務が定常状態になってなって以降、月の半分近くは夕食を作るようにしていて、「一汁一菜」以上のことはできませんが、なかなかそれでも大変で、それでもそういった意味合いがあるのかと思うと、ちょっとガンバってみようかなと思った次第です。