ど真剣に生きる/稲盛和夫

 

 

 この本は、日本財界で多くの尊敬を集め、今年8月に惜しまれながら90歳で逝去された稲盛さんの2006年に放送されたNHK教育テレビ(現Eテレ)「知るを楽しむ 人生の歩き方」でのインタビューをまとめたモノになっています。

 

 その番組自体、稲盛さんの得度も契機であったようで、最早経営者として生き仏のようにも思える存在である稲盛さんの人生哲学としての「ど真剣に生きる」ということを中心に語られています。

 

 なかなか凡人たる我々は、仕事や学業などやるべきことに対する取り組みについて「ど真剣」だと自信を持って言える人はほぼ皆無だと思われますが、どうやったらそういう境地に至れるのかということを、ご自身の経験を踏まえて語られています。

 

 よく知られているように京セラは、大学を卒業してから勤務した会社で大ヒット製品を生み出す貢献をしながら、理不尽に不遇を強いられて会社を去った際に、稲盛さんをしたってついてきた人たちを社員として設立された会社ですが、その社員たちやその家族が満足に生活して行けるだけの給料を払えるようにというところから始まって、会社を設立した京都の振興、立て直しを依頼された日航の再興など、その場その場で「利他」のために必死にならざるを得なかったということで、「利他」の精神が「ど真剣」になることの秘訣のひとつだということを語られています。

 

 そういう稲盛さんが得度されたというのは、非常にしっくりくる話ですが、仏に使える身として、実業界で貢献するよう諭されたお坊さんもさすが!と感嘆させられます。

 

 まさに稲盛さんは仏が遣わされた存在だとまで思えてきます。