上司の「いじり」が許せない/中野円佳

 

 

 女性のキャリアを取り巻く事情を中心に取材をされているフリージャーナリストの方が紹介する職場における「いじり」の実態のその影響について紹介された本です。

 

 「いじり」は「いじめ」と比べて「する」側の悪意が無く、一般的にはある意味円滑なコミュニケーションを図る上での一貫として考えられるようですが、受ける側としては深刻なダメージを受けているケースが多いということを指摘されています。

 

 序盤で「いじり」が起こりがちな状況として「異質な他者が入ってきた時に、どのようにコミュニケーションを取るべきか分からない中で、いじる側なりに模索し、場合によっては「良かれと思って」一種の親近感を醸成しようとして行われるケースが散見」されたということで、コミュニケーションの取っ掛かりとして行われるようで、「される」側としても受け入れられようと、ついついそういう「いじり」に乗っかってしまいがちだということですが、そうやっていじられキャラを受け入れて定着してしまったが結果、知らぬうちにダメージが蓄積して行って、次第にメンタルが破壊されていくようです。

 

 特に女性にとって、ザツなキャラとして扱われてオンナ扱いしないことで受け入れようとする「いじる」側と、受け入れられようとして「いじられる」ことを選択する側に大きな意識の隔たりがあり、未だにそんなことがあるのかとかなり驚いたのですが、ブス扱いや、個人的な性的経験をひつこく尋ねるなんてこともあるようで、表面上受け入れようとしているように見えるだけに、解決が難しい所があるようです。

 

 電通の過酷な労働で自殺に至った高橋まつりさんの事件でも、相当キツいイジリがあったようで、高橋さんとSNS上で交流のあり、自身も女性ならではのイジリに苦しんで自殺の寸前まで追い詰められた方が、同様の体験を慰め合ったことを紹介されています。

 

 結局、こういう状況というのは、自分の都合のいいステレオタイプに目の前の相手を当てはめてしまうことで満足してしまって、ホントの人格を理解しようとしなかったことに起因するんだろうなぁ、と思うのですが、特に旧来的な企業の営業部門などで起こりがちなようですが、SDGsなんてお題目でカッコつける前に、自分のところの社員が日々そういう状況で苦しんでいることを払しょくするような取り組みをすることの方が何百倍も重要だと思うんですけどねぇ…

 

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