目で見る日本史/岡部敬史、山出高士

 

 

 割と編集に苦言を呈することが多いこのブログですが、これは素晴らしい企画の本ですよ!

 

 冒頭にこの本のコンセプトが掲げてあって「歴史上の人物が見た風景を見に行くこと」ということだそうで、歴史上の人物が見たであろう風景を写真として掲げてあって、それに纏わるエピソードを語られているという構成になっており、古代から近代に向かって歴史上の人物が取り上げられています。

 

 例えば、清少納言が『枕草子』の冒頭で「春はあけぼの、やうやう白くなりゆくやまぎは」と語られている元となっていると言われる京都・東山の山際だったり、鴨長明が『方丈記』で「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と語ったとされる鴨川を訪ねられたりしている。

 

 個人的に実際に見たことのある風景もあって、ワタクシが住んでいる奈良周辺も多く取り上げられていて、中大兄皇子が見たであろう大和三山持統天皇が見たはずの天の香具山なども比較的往時の姿を偲ぶことができそうです。

 

 特に印象的だったのが、今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に纏わるモノで、頼朝が平家追討の兵をあげて間もない頃、石橋山の戦いに敗れ、大庭景親の追撃から身を隠したとされる「しとどの窟」がほぼ往時のまま残されているところで、その不安がいかばかりだったかということをうかがわせるかもしれません。

 

 また、頼朝関連で鎌倉へ至る切通が紹介されており、この本では「いざ鎌倉」ということで取り上げられていますが、ワタクシ自身がそのうちの一つに訪れた時は、新田義貞の鎌倉侵攻のことを思い起こしていました。

 

 さらには、信長が天下布武を決心したとされる岐阜城からの眺めや、日本海海戦時に連合艦隊司令長官だった東郷平八郎が離れなかったと言われる旗艦「三笠」の艦橋など、そこに立ったらゾクゾクするだろうなぁ、と思うようなところが数多く紹介されています。

 

 兼ねてから歴史を自分事にすることが、興味をソソるために必要だといろんなネタを手掛かりにして書かせていただいておりますが、ある意味究極の歴史体験になるかも知れませんよ!?