仏教入門/松尾剛次

 

 

 岩波ジュニア新書の一冊ということで、中高生をメインターゲットとして仏教の概要を紹介した本です。

 

 この本は1999年の出版で、冒頭で教鞭を取られている大学の新入生がキリストの誕生日は知っていてもお釈迦様の誕生日を知らないことを嘆いておられますが、今や知っている人は日本人の1割にも満たなくなっているんじゃないかとも思え、中高生だけでなくオトナにも読んでもらった方がいいのかも知れません。

 

 内容としては仏教の起源から基本的な教義、日本への伝来の過程から近代に至るまでの仏教を取り巻く状況の基本的なところを紹介されているのですが、中高生向けの入門編と言いながら、その当時の新説なども盛り込まれていて、割と読み応えのある内容になっています。

 

 縁起が良いとか悪いとか、因縁とか四苦八苦だったり、普段意識はしていなくても我々の生活の中で仏教に纏わる概念がそこかしこにあるのですが、じつは「いろは歌」には仏教の基本的な概念が詰め込まれているということで、そういう歌で文字を習うことで自然に仏教の概念を学んでいたというのは結構意義のあることだったのかも知れません。

 

 また、近代以降の日本の置ける仏教は、江戸時代の檀家制度導入の影響もあって、不況の努力をしなくなって総指揮仏教と堕したという批判がありますが、実は葬式仏教というのはいわゆる公務員たる立場からアブレタ僧のバイト的な位置づけとして鎌倉時代からあったということで、実は江戸時代も教義的な進化や貧民救済などの社会的に重要な役割を果たしていたということで、中にはそういう人もいたかも知れませんが、多くの僧は必ずしもぬるま湯につかっていたというワケではないようです。

 

 それにしても、今やあまり存在感を感じられない仏教ですが、我々の文化を豊かにしていることは間違いなく、日本人として海外に出ていく上でも、自分たちのルーツとしての仏教について、こういう本で基本的な素養をつけておいた方がいいのかも知れませんよ!?