SHO-TIME/ジェフ・フレッチャー

 

 

 エンゼルスファンが多いというオレンジ・カウンティ(郡)のローカル紙オレンジカウンティーレジスター紙でエンゼルス番を務めるの記者の方が、大谷翔平選手のメジャーデビューから2021年の大ブレイク~MVP獲得までを追った本です。

 

 最近はほぼ毎朝大谷選手の前日の活躍を朝のワイドショーで見てから在宅勤務を始めるのが日課となっていて、デビュー当初の苦闘が忘却の彼方に行ってしまっていますが、2018年のデビューから数年は故障などもあり、投打双方での活躍はほとんどままならならず、勝負と思った2020年もコロナ禍で活躍の機会すら奪われるカタチとなってしまいました。

 

 2021年の大ブレイクについては、シーズン後に本人がNumber誌へのインタビューで語ったように、そのシーズンの成績によっては二刀流はその年限りになるという危機感があったということで、本人の意欲も充実しており、またそのためのコンディション調整も万全だったということもあるのですが、シーズン当初のマドン監督の決断が大きく作用したようです。

 

 というのも、それまで日ハムでプレー時代も登板の翌日は欠場など、コンディションへの配慮のため抑制的なプレーとなっていたのを、マドン監督が事前の制限を一切排して、コンディションを見ながらできる限りプレーさせるとして、登板する試合も打席に立つという決断が大谷選手のヤル気を解き放ったとされています。

 

 惜しくも僅差でホームラン王は逃し、二けた勝利には1勝足りなかったモノの、投打双方での目覚ましい活躍に文句ナシのMVP受賞ということになったのは周知のとおりです。

 

 仮に2021年の活躍が無く、二刀流を解除していたとしても、ベイビーフェイスのイケメンスラッガーもしくはピッチャーとして、それなりの人気は博すだけのポテンシャルはあったんでしょうけど、道なき道を行く二刀流のパイオニアとしてのスタンスがあってこそ、アメリカのファンの琴線に触れて圧倒的な支持につながったということなのでしょう…その後、大谷選手の成功を受けて、二刀流に取組むようになった選手のことも紹介されていて、正に大谷選手が新たな道を切り開いたということになりそうです。

 

 それにしても、1994~95年の大規模ストライキ後の野茂フィーバーにせよ、今回のコロナ禍をうけての大谷選手の活躍と、メジャーリーグの危機的な状況を救ったのが、いずれも日本人選手というのが不思議な気がしてなりません。