ロシア点描/小泉悠

 

 

 ロシアのウクライナ侵攻以降、時折メディアでお見掛けするようになったロシアの軍事・安全保障政策の研究家である小泉さんがロシアの市井の方々の横顔と、そういった人々の住む国がなぜ侵略国家となったのかについて語られた本です。

 

 西欧の資本主義陣営に属する日本にいるワタクシどもとしては、あまりロシア人に馴染みのある人は多くないのではないかと思いますが、基本的にあまり他人を信用しないというスタンスがある反面、何かのキッカケに仲良くなると徹底的にお節介になるということで、その辺の距離感やスイッチの入り具合が日本人にとっては戸惑うことが多いということを指摘されています。

 

 一見、圧政にも我慢強く忍従するイメージがありますが、実はしたたかに誤魔化すワザにも長けているということで、そういうロシア人の衣食住も織り交ぜて紹介されていて、個人的には特に食の部分に興味をソソられ、旧ソ連邦諸国の食文化も含めて、意外と多様な食文化を楽しめることが紹介されています。

 

 またロシアというと大国のイメージがあり、国土が広大であることは間違いないのですが、その実、経済規模や軍事力がそういったイメージについて行っていないという側面があり、そういうムリな"背伸び”がいろんな歪みを生みかねない状況にあるようですが、そういう矛盾をプーチンが腕力でカバーしていたということのようです。

 

 そういうロシア人は、権力者に割とマッチョな姿勢を求めることが多いことを指摘しておられて、これまでもプーチン政権は支持率のテコ入れの意味もあって旧ソ連邦諸国への軍事介入を行い、それなりの支持を集めてきたということで、今回のウクライナ侵攻もそういう文脈で捉えられると指摘されていますが、それにしては高い代償を払ってしまうことになりそうです…