日本国紀/百田尚樹

 

日本国紀

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 以前、著者の百田さんがこの本の編集を手掛けられた有本香さんとの対談本である『「日本国紀」の天皇論』を取り上げましたが、そちらはこの本の番外編とも言うべきモノで、天皇制にフォーカスした内容だということで、いつか本編であるこちらも読まないとな…と思っていたのですが、500ページを超える大著ということで尻込みしていたところ、近くの図書館の蔵書点検期間ということありハラを括って手に取ってみました。

 

 この本、ワタクシはあまり意識していなかったのですが、極右の論客と捉える向きも多い百田さんの語る通史ということもあって、ファンにもアンチにも大きな反響を呼んだということなのですが、どんな感じなのか怖いモノ見たさ的な興味もあります…(笑)

 

 結論から言うと、覚悟していたよりずっとマイルドで思ったよりもかなり真っ当な通史なのですが、特に近代以降時折百田さんらしい排外的な記載が織り交ぜられてはいるモノの、戦前の軍部の暴走を美化するワケでもなく、冒頭で万世一系天皇家を必要以上に美化するところも無く、日本国民の倫理性の高さや優秀さを賛美しているところは気にならなくもないですが、プレーンとは言わないモノの、物議を醸しがちなSNSやメディアでの発言と比べると肩透かしとも思える穏やかさです。

 

 元々この本を書かれたのが、ケント・ギルバートさんとの対談本で意気投合されていたGHQの自虐洗脳プログラムWGIPに毒された日本人に日本人としての誇りを取り戻してもらうために書かれたとのことで、右翼的な思想の方だけでなく、何か自信を無くしていた人が励まされる思いがして、支持されているという側面もありそうです。

 

 しかも、明治維新の思想的な起点がジョン万次郎にあったんじゃないかというご指摘など、かなり独特な観点も盛り込まれていて、500ページ以上あるとはいうものの日本史全体をカバーしているだけあってかなり駆け足の通史ながら、かなりの発見があります。

 

  ただ、出版後物議を醸したように、排外的な内容であまりウラをしっかりとらずに書いちゃった内容もあるということで、そういうあんまり本筋に関係ないように見えるところでそういうことをやってしまうのはちょっと残念な気もしますが、まあ、それが百田さんなんでしょうねぇ…