毒親/中野信子

 

 

 東日本大震災やコロナ禍を経て、”絆”が強調される半面、最も深い関係であるはずの家族との不和に苛まれる方もおられるワケで、特に親からの理不尽な仕打ちに苛まれる子どもたちは逃げ場がないだけに、かなり悲惨な境遇を強いられるということで、最近「親ガチャ」というコトバと共に、この「毒親」というコトバがよく語られるようになってきています。

 

 著者である精神科医の中野先生もご自身がそういう境遇にあったということでご自身の体験については語られていないということなのですが、この本を書かれるということが身につまされることが多かったようで、かなりツラい作業だったと冒頭で語られています。

 

 という精神的なモノが影響しているのかどうかは分かりませんが、結構理詰めに理論と実例を重ねた展開が多い中野先生の作風ですが、本作はかなり情緒的な色彩が強いモノとなっています。

 

 「毒親」側としても、子どもに対してそういうことをしてしまうのは、往々にして親自身も、自分の親にそういう仕打ちを受けてきたからというケースが多いということで、恵まれない境遇というのは往々にして再生産を繰り返してしまうようです。

 

 かなり救いのない感じで、なかなか解決は難しいようなのですが、被害に遭っている子どもたちにとって、「もうダメだ…」とか「何とかしなくては!」思ったら親や周囲にどう思われようが、親が可哀想だとか思わず、とにかく自分ファーストで距離を取る、できれば当面接触しなくていいようなところまで逃げる、ということくらいしか被害を軽減するには手段が無いようで、そこは躊躇なく決断することが不幸の連鎖を断ち切ることにつながる可能性があるので、決然と取組んで欲しいモノです。