歴史学者という病/本郷和人

 

 

 最近、毎月のように著書を出版しているようにも思える程の人気を博している日本史研究者である本郷センセイの自伝的な著書です。

 

 ただ自伝的なモノというだけでなく、歴史学というモノの実態や、歴史学者を志す人たちに向けて、どういう風に歴史学者になっていくかの啓蒙、また歴史を好きになって欲しいという”欲張り”な著書となっています。

 

 特に印象的なのが、歴史を好きになることと、歴史学者となることにはある程度の隔たりがあるようで、本郷センセイ自身も歴史のオモシロさから歴史学の文献至上主義だったり、実証主義的な取組が主流を占める歴史学へ移行するにあたり、結構な戸惑いがあったことを明かされています。

 

 あくまでも歴史学というのは科学の一端であり、文献などのエビデンスに基づくものであるべきだというのは、科学的な態度として一定の正当性があるものだというのは衆目の一致するところだと思いますし、そこについては本郷センセイ自身もある程度ナットクされているようなのですが、日本の歴史学会というのはそれが行き過ぎている部分があるということで、一定のエビデンスを基にした推論という、科学的な姿勢の一端が決定的に書けているんじゃないか、というのが本郷センセイの主張であり、自他ともに認める日本史学界における異端の一因のようです。

 

 日本史学界というのが、未だに皇国史観などの国家の圧力みたいなモノの影響を強く受けた権威主義的な側面が強いということで、諸外国からすると研究のアプローチが遅れているというところがあり、本郷センセイみたいな柔軟な姿勢を持っている人が一定の影響力を持つことで、より多様な研究を促して、活性化することにつながると思うんですけどねぇ…