回復力/畑村洋太郎

 

 

 先日紹介した楠木建さんの『絶対悲観主義』の中で、楠木さん自身が失敗された時に読まれてご自身を励ましているんじゃないかと思いながら読まれたと紹介されてたのが印象的だったので手に取ってみました。

 

 畑村さんは「失敗学」の提唱者として『失敗を生かす仕事術』などの著書で知られるということですが、この本では失敗からの「回復」にフォーカスすることで失敗への対処の一端を語られています。

 

 失敗から「回復」のプロセスの中に、失敗が発覚したその時点から、その失敗によって影響を受けた人々からの信頼の回復までの過程があるワケですが、その各段階において、やってはいけないこと、やっておくべきことを丁寧に語られています。

 

 意外かもしれませんが、一旦その失敗の責任から「逃げる」ということも必ずしも「やってはいけない」ことに含まれるワケではなく、逆に過度に責任を背負い込み過ぎることの方が、却って周囲への悪影響を大きくしかねないということもあるようです。

 

 個人的に特に印象的で目からウロコだったのが、失敗したとわかった時点で、何とか早めにそれを取り返そうとしてアレコレやろうとしてしまいがちなのですが、失敗をしたという認識そのものが、特に原因を作ったと思っている人にとってはかなりのダメージとなっているということで、そういうダメージを追った中で講じた対策というのは、得てしてマイナスの影響を与えやすいということで、失敗したとわかった時点でまずやるべきことは、失敗によって負ったダメージからの回復を図ることで、リカバリーのための方策は、ある程度それに取組むためのエネルギーを回復した時点で再開すべきだということです。

 

 失敗の影響範囲にもよると思いますが、失敗がもたらすダメージというのは決して軽視すべきではないモノのようで、最悪の場合、自死という選択をしてしまう可能性もあるということで、この本で紹介しているプロセスを淡々と周囲の協力を得つつ、ひとつずつ焦らずに積み上げていくことが、「回復」への近道となるようです。