ふしぎな中国/近藤大介

 

 

 『未来の中国年表』など中国関連の多くの著書で知られる中国ウォッチャーの近藤大介さんが昨今中国で取りざたされる新語・流行語・隠語を手掛かりに、なかなか捉えどころのない中国の現況を紐解こうという主旨の本です。

 

 最近の中国と言えば、習近平がこれまでの慣例を破って国家主席として3期目に突入しましたが、ゼロコロナ政策のこともあって、これまで安定的に支持されてきたように見えた習政権に対して、大学生を中心に静かな抵抗の動きが見られるなど、永久政権を志向しているとも言われる習近平にも不確定要素が見え隠れしているようにも思えますが…

 

 そういう習政権の統治の手法として、この本でも1章を設けて習近平の”神格化”とも言えそうな思想統制的なキャンペーンについて触れられていて、習近平の思想を一言一句書き写すのがノルマとなっているということで、共産党幹部の間では習近平の政策を支持しないと汚職の濡れ衣を着せられて追放されかねないということで生き残りのために締め付けに唯々諾々として従うことを余儀なくされるということのようです。

 

 数年前まで国民の間では、国を挙げての向上心の過熱が見られたような報道がありましたが、次第に若い世代の間で勉強や成功に向けた取組に追い立てられることに疲れを覚える向きが増えてきているようで「躺平」(タンピン)と言われる、日本語で言うと「寝そべり主義」とも言える考え方が広まっているようです。

 

 個人的な感想としては、旧来の中国人はあくせく働くという感じからは遠いイメージがあって、「躺平」的な姿勢が元々の中国人っぽいような気もして、ある程度豊かになったんだから、それで十分なんじゃないの!?と思い始める向きが増えて行っているんじゃないかという気もします。

 

 アメリカに追いつけ追い越せということで、習近平の政策が支持されていたところはあるんでしょうけど、徐々についていけない中国人が増えていくのかも知れず、そうなると習近平の立場というのがどうなっていくんだろう…というギモンが大きくなっていくんじゃないか、という気がするんですけど…