40歳からは自由に生きる/池田清彦

 

 

 40歳ってちょっと早過ぎんじゃないの!?というところを除けば、リタイア本みたいなタイトルですが、サブタイトルにあるように趣旨としては「生物学的に人生を考察する」ということなんだそうで、「人生の考察」にとどまらず日本社会の在り方までを生物学的な観点から評価されています。

 

 なぜ40歳からかというと、近年の生物学の研究成果から動物のある種族が自然のままにあったらどれくらい生きれるのかという「自然寿命」が測れるようになってきているということで、それによると人間の「自然寿命」は39歳なんだそうで、日本人が80歳以上生きれているのは、医療の進化だったり食物の豊富さと言った要素がもたらしているオマケであり、オマケなんだから好きに生きればいいんじゃないの!?というのが池田先生のおススメのようです。

 

 また性交に関する考察では、快楽のために性交をしようとするのは人間だけらしく、他の種の動物はあくまでも種の保存一択のために性交をしており、鮭などその目的を果たしたら死に至る種もあり、どちらかというと性交は苦行であることが多いようなのですが、なぜ人間は性交に快楽を求めるようになったかということについては、人間にはミョーな知恵があるモンだから、性交が苦行だとすると避けようとするじゃないか!?と創造主が考えたからで、快楽という成果のために性交をするように仕向けたのではないかと指摘されているのは、かなり興味深い所です。

 

 かつてアイルランドで特定の種のジャガイモばかりが栽培されていて、その種が病気に罹って収穫が激減した際に、アイルランドが記録的な飢餓に見舞われアメリカへの大量意味が発生したことがあったということですが、自然界では一定の多様性が必要で、過度に画一化されることは脆弱性につながると指摘されていて、近年の日本の低迷は社会的な均一性が過度に進行したが故ではないのか、という生物学的な考察をされているのは、あまりにも的を得ているような気がします。

 

  ということで、生物学から人生論や社会的な問題点まで見据えるという、かなり深遠な内容の興味深い本ですので、是非とも手に取っていただきたいところです。