勝敗はバッテリーが8割/谷繫元信

 

 

 1998年の横浜ベイスターズ38年振りの日本一に貢献し、2002年に中日ドラゴンズに移籍してからは、落合ドラゴンズの黄金期を支え、古田敦也さんと並んで球界を代表する知性はキャッチャーとして活躍された谷繫産の著書です。

 

 多分、編集者は最近の流行りに乗っかって「9割」としたかったんでしょうけど、谷繁さんがそれは言い過ぎやろ!?みたいな感じの綱引きがあって、このタイトルになったんじゃないかという気がしますが…

 

 バッテリー論みたいなタイトルですが、キャッチャーについては冒頭にご自身が横浜ベイスターズでレギュラーとしての地位を確立されるまでの言及に留まっており、サブタイトルにあるように、ご自身が横浜、中日、侍ジャパンでバッテリーを組まれた投手を中心に30人の名投手について論評されるというスタイルになっています。

 

 谷繁さんというと、横浜時代は「大魔神」佐々木投手、中日時代には2007年日本シリーズ第6戦の伝説のパーフェクトからのリリーフで知られる岩瀬投手とのバッテリーで知られますが、これに加えてヤクルトのクローザーとして長く活躍された高津臣吾さんを紹介されていますが、佐々木投手はフォーク、岩瀬投手はスライダー、高津投手は清かーと絶対的な武器となる球種があることが、名クローザーとしての資質のひとつとも言えそうなことに言及されており、それがあればその球種を軸に投球の組み立てをする過程を語られています。

 

 また、あの2007年日本シリーズ第6戦の継投の裏話も盛り込まれており、谷繁さん自身も岩瀬投手へのスイッチを進言されたようで、その緊迫した舞台裏を垣間見れるところもこの本の魅力の大きな要素と言えるかもしれません。

 

 個人的には、それぞれの投手への言及が、短い人だと2ページ程度になってしまっていて、投手の数を半分にしてでも一人一人への谷繁さんの論評をもうちょっとじっくり聴きたいなと思うところがあって、多少残念な気もしますが、名捕手が名投手を語るというのは、ありそうであまり記憶の無い企画だったんでそれなりに楽しめます。