ウクライナ危機/日経BP編

 

 

 ロシアによるウクライナ侵攻の主に経済面への影響を分析した本です。

 

 ウクライナ侵攻以前というか、コロナ禍以前の経済のグローバル化というのは、我々が何となく思っていた以上に緊密に世界中の、ひょっとしたらあまり聞いたことのない国までがネットワーク化されていたようで、そんなことが可能だったのも、地域的な紛争はあるにせよ、全体を見ると割と平和な状況が続いたことに依拠していたということで、ウクライナ侵攻はそういうグローバル化の前提を根底から覆してしまったことが、この本を読むとよくわかります。

 

 特に、ウクライナ侵攻を受けて西側諸国がグローバル決済基盤であるSWIFTからロシアを締め出して、その状況が仮にウクライナ侵攻を止めて撤退したとしても、そう簡単に復帰させるつもりもなさそうなことから、ロシアが自身が支援するアフリカ諸国や中国などと結びついて経済圏を作ることも想定されて、西欧諸国の経済圏との分断の長期化も想定されるということウクライナ侵攻の影響の大きさが伺えます。

 

 そういう分断が長期化すると、ロシアが世界有数の産出量であるLNGや石油などの獲得競争も長期化することになり、西欧諸国においてもコストインフレの長期化が避けられない状況だということです。

 

 またロシアは燃料資源だけではなく、鋼材資源の産出量も豊富で、日本においてもロシア産建材の輸入が多かったようで、こういう資材価格の高騰が中小建設業の経営を圧迫するという側面もあるようです。

 

 この紛争自体も長期化が避けられないようになっている状況の中、経済の交流の分断も長期化見込まれ、あらゆる前提を見なおさなければならないようです。