犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉/出口保行

 

 

 長く少年犯罪の心理分析に携わって来られた方が、親が良かれと思って子どもに対して発するコトバが及ぼす影響について語られた本です。

 

 最近、「毒親」とか「親ガチャ」など、子どもが親に及ぼす悪影響について取り沙汰されることが増えているように思えますが、多くの親は方法論や方向性の良し悪しは別にしても、子どもがよりよく育つように意図しているはずなのですが、そう思ってかけたコトバがキッカケとなって子どもが非行や犯罪に走ってしまうリスクについて、著者である出口さんが、個人のカウンセリング等の経験を通して得られた知見を、ケーススタディとして紹介されています。

 

 なお、犯罪心理学って、ワタクシもカン違いしていたのですが、「なぜその犯罪が起きたのかを分析する学問」ではなくて「更生への指針を示す」ことなんだそうです。

 

 ケーススタディでは、親として子どもに言ってしまい勝ちな、一言が以下の通り、子どもの成長の阻害要因となってしまうということを実例をもとにしたストーリー出語られています。

  ・「みんなと仲良く」→ 個性を破壊

  ・「早くしなさい」→ 先を読む力を破壊

  ・「頑張りなさい」→ 意欲を破壊

  ・「何度言ったらわかるの」→ 自己肯定感を破壊

  ・「勉強しなさい」→ 信頼関係を破壊

  ・「気をつけて!」→ 共感性を破壊

 

 こういう声掛けの意図の中には、オトナの都合を優先しているという意図が隠されていることが多々あるようで、必ずしも子どものことを慮ってというワケではないということを子どもはビンカンに感じ取っているようです。

 

 この本で取り上げられているケースはどれも、世間的には「いい家」とされる家庭で起こったことで、それでもちょっとした声掛けが取り返しのつかないことになりかねないということなのですが、結局は子どもへの全面的な信頼感を欠いたことが、問題行動につながるということで、ちゃんと子どもに対して信頼感を持っていることをコトバや態度で絶えず伝えることが子どもの健全な成長につながるようですので、あんまり細かいことを気にし過ぎない方がいいのかも知れません。