女帝小池百合子/石井妙子

 

 

  東京都知事である小池氏の評伝なのですが、なかなかに衝撃的な内容で、出版された当初多少話題になったくらいで、その後無視され続けているのが不思議なくらいの暴露ぶりで、フツーならばありがちなゴシップ本としてスルーするところですが、以前紹介した日本におけるノンフィクションを追い続けられている武田徹さんの『現代日本を読む』で冒頭にこの本が取り上げられているので、400ページを超えるボリュームに躊躇しながらも手に取ったのですが、あまりに衝撃的な内容にイッキに読んでしまいました。

 

 再三、カイロ大学卒業、しかも首席で、と称されていることにギモンを呈されながらもその追及をかわし続けているように小池氏にはどこか胡散臭いモノがつきまとっているようですが、彼女の父親が山師そのものだったということのようで、彼女の人生自体もこの本によると異常なまでの上昇志向の挙句ウソで塗り固められたモノだということですが、読んでいる中でこの本で書かれている経緯よりも、なぜこれまで大きな問題とされてこなかったのか、ということが途中から気になって、あまりこの本に書かれている経歴が気にならなくなったというのが正直なところです。

 

 時折、学歴詐称で失脚する人が出てきますが、彼女もその経歴の中で常に学歴詐称についての説明を求められて、明確な説明をしないまま今に至っており、コンプライアンスについての関心が異様なまでに高まっている今だったら、絶対にあの立場になっていなかったと思うのですが、それを実現させているのは権力者へのすり寄りのウマさと、恐怖支配的な手法で暴露を抑えてきたということに触れられているのですが、それにしては情報統制がユルすぎるとも思えて、でも結局時代のあだ花ということになるのでしょうか…

 

 彼女自身総理大臣への志向を隠していませんでしたし、現時点では実現はかなりむずしい状況になりましたが、こういうハリボテの政治家が一定の勢力を確保できるところに日本の政治の貧しさが顕著に現れているような気がします。