マスク社会が危ない/明和政子

 

 

 教育学の専門家の方がコロナ禍におけるマスクの強要や過度の対策が子どもの成長に及ぼす悪影響について語られた本です。

 

 カタールでのサッカーW杯ではほぼ誰一人としてマスクをしている観客がいなかったにも関わらず、クラスター感染が発生したなんてことは聞きませんが、なぜ日本人がマスクをし続けるんだろうな…と思いつつ、しなければメンドーなことになりかねないので、人目のある時はマスクをしていますが、そういう同調圧力的なことが子ども~学生の精神にかなりネガティブな影響を与えていることを指摘されています。

 

 小さな子供の場合、親を中心として接してくれる人の表情を見ながらコトバや情動を学んでいっているということなのですが、さすがに自宅で親の顔はマスクなしで見ているでしょうけど、家の外ではほとんどの人がマスクをしているということで、表情を読むといったことが困難になり、コミュニケーション能力の成長が阻害されたということがあったようです。

 

 また、学校でもなかなか生徒同士のコミュニケーションが阻害されることも少なくなかったということで、社会性の形成にとっては大きな機会損失となったようで、そういうことが今後どういう影響を及ぼすのかということについて危惧されています。

 

 確かに感染拡大当初はワクチンもなく影響度も読めなかったことから、ある程度の締め付けも必要だったでしょうけど、欧米諸国がそうだったように、ある程度影響範囲が読めるようになってからは段階的に社会生活を取り戻していくべきだったのでしょうけど、市民社会の成熟していない日本や中国などはリスクばかりに目が行ってしまって、子ども達への悪影響などといったところに目を向ける人が、特に政策決定に影響のある人たちの中にほぼ皆無だったことに、発想の貧困さが顕著に表れてしまったようです。

 

 こういうことが学びになって、今後はちょっとはバランスの取れた考え方が取り入れられたらいいのですが…