奨学金、借りたら人生こうなった/千駄木雄大

 

 

 昨今、親ガチャとか奨学金の過剰な負担で、大学を卒業してある程度の勤め先を決めたモノの返済で苦しんでいる人たちのことが取りざたされているようです、この本はそういった人たちの実情を紹介したモノです。

 

 とは言っても、かなりキビシイ状況に置かれた人も紹介されてはいるものの、ことさらその悲惨さを強調するという感じではなく、どちらかというと淡々とその状況を紹介するといったトーンに見受けられます。

 

 昨今では二人に一人が奨学金を借りる状況になっているということですが、この本で紹介されている人の多くは、高校までは面倒を見るけど、大学に行くのは自分の選択なので、自前で何とかして欲しいと親に言われて…という人がかなり多く、学生時代も奨学金だけでなくアルバイトにも忙殺された人が多いようですが、奨学金を投資ととらえて、返済は苦しい部分はあるものの、奨学金を得て大学に行ったことを前向きな転換点とされている方が多いのに救われる想いがします。

 

 ということで、返済が滞って…といった事例は紹介されていないのですが、医学部に行ったり、大学院まで奨学金を借りて、Maxでは奨学金で2000万円借りた事例も紹介されており、それしか選択肢はなかったのかも知れませんが、思い切ったなぁ、とは思わされます。

 

 そういう状況というのは、奨学金が貸与型に偏っている日本の特殊事情というモノもあるようで、欧米のように給付型を普及させようという動きも徐々に出てきつつあることに希望を感じます。

 

 この本では奨学金を借りた人の紹介というテーマなので、借りられない人というのはスコープ外なワケですが、奨学金を借りることすらできない人もいるはずで、そういう中でも埋もれさせるにはもったいない人材もいるはずで、少子化も進む中、そういう人材に機会を与えるセーフティネット的なモノをいち早く整えてほしいところです。