「移民国家」としての日本/宮島喬

 

 

 移民に対する日本政府のスタンスと言えば閉鎖的なイメージがあって、ウクライナ侵攻に伴う難民の受入れでも、地理的な問題はあるにせよ、西欧諸国と比べると2、3ケタ下回る体たらくでしたが、実はちゃくちゃくと移民が増加していたようです。

 

 この本によると2019年時点での移民は293万人で、移民受け入れを日本の割には積極的に受け入れる政策へと転換した1990年と比べると3倍になっているということです。

 

 ただ、日本における移民の受入れというのが、途上国からの単純労働力補充のためのように思えるご都合主義的なモノだというイメージが強く、しかも制度設計自体が搾取の温床になるようなもので、過酷な条件を押し付けるようなことが多発していたことも紹介されています。

 

 ここ10年程の深刻な労働力不足で次第に条件は改善されて行ってはいたようですが、未だ如何に低廉な労働力を確保するかといった観点になっており、コロナ禍以降、日本経済の地盤沈下により労働を提供する側としての魅力が大きく低下している中、少子高齢化もあって労働力の減少が続く状態で、むしろ移民として”来ていただく”ような政策に転換する必要すら感じられる中で、移民として受け入れる条件の抜本的な見直しも必要かもしれません。

 

 出口治明さんが『日本の伸びしろ』の中で、世界史の中で繁栄した国家というのは例外なくダイバーシティに寛容な社会を作り上げていたということに触れられているように、日本も積極的な移民の受入れをテコに再生を図ることを考えた方がいいのかもしれません。