スポーツで地域を動かす/木田悟

 

 

 日本スポーツコミッション理事長で、スポーツによる地域振興に取り組まれている編者を中心に、地方においてスポーツをキッカケにした地域振興への取り組みの現状を紹介した本です。

 

 2011年のスポーツ基本法の制定以降、スポーツを「体育」からもっと広い意味での娯楽や健康保持の手段だけでなく、スポーツが持つ地域コミュニティにおける活性化や繁栄の起爆剤としてのポテンシャルが注目されるようになり、そういう趣旨での活動も徐々に成功を収めつつあるようです。

 

 この本では、自治体などの主導で映画撮影の誘致などに取り組むフィルムコミッションでの成功例を紹介しつつ、それに続く意味でのスポーツコミッションの取り組みを紹介しているのですが、フィルムコミッションが映画撮影の誘致と目的が限られているのに対して、スポーツコミッションの取り組みには、スポーツイベントやスポーツ合宿の誘致などにとどまらず、地域住民の健康増進のための啓蒙活動や、子どもたちのスポーツ体験のイベントなど、地域住民が直接恩恵を受けることができる活動までがスコープとされているところも多く、かなり継続性が高い活動が多く含まれていることに大きな意義を感じます。

 

 特に、2002年のサッカーW杯において、アイルランド代表の合宿地となった出雲市において、その後も継続的にアイルランドとの交流を図り、子ども達のサッカー教室などの活動につなげられているところが印象的です。

 

 今後は部活動の指導の受け皿などへの拡大も想定されるところで、こういう活動が文化としてのスポーツの深化につながることを期待したいところです。